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夏コミ雑感

無題

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 ――さて、少しばかり駄話を。
 ここしばらく、エロゲの現状などに対するグチを時々並べていたかと思います。
 そして(書いたかどうか忘れましたが)なろう的な小説についても、やはり似た状況にあるかと思います。
 そこにあったのは、オタク界の現状があまり望ましくないものなのではないか、という危惧でもありました。
 正直、「なろう」的なものを読んでいる人たちの層が、ぼくには見えないけれども廉価版のエロゲなどを支持している層は明らかにオタク的資質に欠ける、言ってよければDQN的感性を持つ人たちなのではないか……といったことを今まで、書いてきたように記憶しています。
 書店のラノベコーナーを眺めると、どれもこれもが異世界に転生してチートになっており、まあ、わりとどうでもいい気分になって来ます。

 正直、そんなわけでアニメにも縁遠くなり、夏コミで買った同人誌でむしろ、昨今のアニメ事情を知る、という逆転現象がぼくの中で起きております。
 しかし、とある評論同人誌(評論しか買わなくなってる辺り、もうダメなのですが)を読むと、今期(前期?)のアニメでやたらとオタクネタのハーレムラノベを原作にしたものが多いと言います。
『冴えない彼女(ヒロイン)の育て方 ♭』、『Re:CREATORS』、『月がきれい』などがオタクものであるとの話。

 前回の駄話でも、グチと共に『エロマンガ先生』について語りました。
 しかしこうなるとまた、オタクネタの巻き返しがあるのでは……との感も、なくはありません。
 少しは希望を持ってもいいのか……というのが、今回の夏コミに参加しての結論でありました。

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 ……すんません、ここしばらく「そろそろ新情報を」と繰り返しているのですが、なかなかヒマが取れず、作業が進んでおりません。
 いや、本職の方が忙しいから……といった理由でもあればまだいいのですが、ここしばらく仕事がなく、専ら求職に駆け回る毎日で……。

 そんなわけで駄話のネタもないのですが、ちょっとだけ。
『エロマンガ先生』が今期アニメではずば抜けて人気のようです。
 ぼく自身は『俺妹』最終回のショックで今一、乗れずにおりました。
 小説も二、三冊読んでいたのですが正直、それほどの新味も感じず、そこで止まっておりました。
 が、それがアニメ化するや大騒ぎというのは、ちょっと意外ではあります。
 本作、恐らくですが実績のない作家が書いていたら、恐らく編集者からは「古い」という評価を受けていたと思うのです。それこそ『俺妹』フォロワー的なオタクネタ、秋葉礼賛、引きこもり主人公の小説というのはやはり、ここ五年、ちょっと古い感がある。
 いえ、そもそもアキバ系みたいな言葉自体が古びてしまい、メイドも妹もツンデレも、やはりちょっと古いという印象を拭えない。
 しかし「ならば新たな流行は何なのか……」というと見えてこない。あるのはソシャゲであり、なろうといったオタク濃度の薄いモノ。
 あまり好ましい状況ではないと思っていたのですが、本作が現れたことで、「まだまだアキバ系強し」ということが証明された、とは言えないでしょうか。
 本作の成功が、オタク界を好ましい方向へと進めてくれることを望みます。

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 さて、駄話です。
 といっても、ここしばらく『ダンガンロンパV3』についてのグチが続いておりました。前回も「あいらんどモード」について語りましたが、ご存じない方のために説明しておきますと、これは『ダンガンロンパ』本編にもあるギャルゲー要素(キャラクターたちをデートに誘うシチュエーション)をその部分だけ取り出し、おまけのミニゲームとしたものです。
 本編をプレイするだけでは全キャラ(デート、と言ってはいますが男子キャラの分もあり)とのデートイベントコンプが難しいがための救済策なのですが、『V3』では『ダンガン紅鮭団』という形で継承されました。
 さて、一体全体どうしたことか、イベント絵すらもないボイスもほとんどパートボイスの、このあくまでオマケであるモード、やり込んでしまう中毒性があります。
 一つには前回記事に書いたようにこのモードが、凄惨なコロシアイを強制されたキャラクターたちの、「あったかも知れない平和な日常」だからなのでしょうが、それだけが理由ではない気がします。
 単純に自分の計算で相手の好感度を上げていく「攻略」性が楽しいのでは、という気がします。
「エロゲ」もオタク文化としてすっかり没落して久しいですが、むしろ最盛期に評価されていたゲーム(例えばkey作品)を見ていると、「ノベル」要素が高いというか、「読まされる」性質の強いものであることであることに気づきます。
 それはそれで文芸性が高く、楽しいのですが(ぼくが売れもしないADVゲームというジャンルを出し続けている理由もそこにあるマス)、一方で『ときメモ』型のコントローラブルなギャルゲーの楽しさも、それはそれで確実にある。
 選択肢もだんだんと少なくなるなど、「ノベルゲー」に近づく一方のADVとはまた違った魅力が、シミュレーション圭にはあると思うわけです。
 そんなわけで少し前、(といっても半年以上経ってしまいましたが……)以下のようなことを書きました。

>ちょっと、当サークルの作品についても「アイランドモード」があるといいかな……と思い至りました。

 それからずっと何もお伝えしないできましたが、そろそろ「新作情報」の詳細をお伝えできるかと思います。
 もうちょっとだけ、お待ちください。


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 さて、以下は広告消しの駄話です。
『ニューダンガンロンパV3』ですが、不評を受けて「公式」が自虐CM的なものを打ち始めています。

う~ん、広告消しのはずなのに広告っぽいモノを貼ってしまった……。
 ↑これね。

 う~ん、こういうのって例えば『MUSASHI GUN道』みたいな制作者の力不足や計算違いで失敗したものを自虐するならば好感が持てるのですが、確信犯で炎上させておいてぬけぬけとやられてはムカつくだけなんじゃないでしょうかね。
 本作については前回いろいろと書きましたし、言いたいことは大体言い終えてはいるのですが、あの後、おまけのミニゲームをやったので、ちょっとそちらの感想など。

 ミニゲームについては、スタッフから「おまけと言えない、それだけで別売りできるようなボリューム」といった趣旨の発言がなされておりました。
 なるほど、その言葉に違わずおまけは「だんがん紅鮭団」、「超高校級の才能育成計画」、「モノクマの試練」と盛りだくさん。また、本編中にも本編終了後もプレイできる形でカジノも用意されています。
「紅鮭団」は「だんがんアイランド」などと同様の、本編のギャルゲー要素を再編集したもの。「愛の鍵」イベントというものが用意され、従来作のそれよりも(イベント絵はないものの)ギャルゲー要素がパワーアップしています。
「モノクマの試練」はファミコン時代の『ドラクエ』のムードを再現したRPG。
「育成計画」は一種のすごろくゲーム。ここで『1』から『V3』に至る全キャラクターを育成し、そして「モノクマの試練」に投入する仕掛けです。
 中でも一番、注目されたのは「育成計画」ではないでしょうか。旧キャラと新キャラが全員集合し、立ち絵と(パートボイスとはいえど)音声つきで会話を交わすというのはファン誰もが夢見た光景です。これを楽しむことで、今回の首謀者がぼくたちに投げかけた言葉を、ぼくたちは否定できるのではないでしょうか。
 もっとも、このモードは前回書いたような、あんなオチの後にしか解放されず、素直に楽しめない、といった声も聞こえては来ますが……。

 さて、ちょっと話は変わりますが、去年は『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、『この世界の片隅に』といった特撮、アニメ映画の傑作が次々と発表され、大きな話題を呼びました。
 多分、みなさんも既に似たような意見はどこかで見聞なさっていることでしょうが、これらの作品がヒットした大きな要因は、「喪失の後」というモチーフを共通して持っているからではないでしょうか。
『シン・ゴジラ』では中盤で内閣首脳が全滅してしまい、若手の政治家たちが活躍しますし、『君の名は。』はまるで『ドラえもん』にでもありそうな、「既に起こってしまったカタストロフ」を阻止することが物語の主眼でした。『この世界の片隅に』は喪失そのものはクライマックスに当たるわけですが、やはり「その後」が大事であることに変わりはありません。
 これらは311の震災のメタファーである、といった解説がされることが多いでしょうが、同時に二十年かけて衰退した日本に住んでいること自体が、大きな「喪失の後」とも言えます。
 そして更に、不況や震災といったモチーフのみならず、そもそもオタク文化が「学生生活」を舞台にするのは、ぼくたちが「喪失の後」から、「あったかも知れない幸福な学園生活」を何かしらに見出したいという欲求に駆られているからに、他なりません。オタク文化は、そうした個人的な「喪失」を補完するためのメディアでした。
 だからこそ、実は311以前の作品である初代『ダンガンロンパ』にも、近しいモチーフが見て取れるのです。

 ぼく自身は、本作のファーストインプレッションはアニメだったのですが、作中で「既に死んだ仲間たちが楽しげに笑っている」写真を見つけるシーンが、大変印象に残りました。
「ぼくたちはここで初めて出会い、コロシアイに巻き込まれたのに、そんなぼくたちが死んだ仲間含め、仲よく楽しげに青春の日々を過ごしている」。
 何故そんな写真があったかについてはもちろん、劇中で謎解きがあるわけですが、「喪失の後」に、そうした「あったかも知れない幸福」を見出してしまうというシチュエーションに、ぼくは大変心揺さぶられました。
『ダンガンロンパ』は才能に恵まれた者たちが凄惨なコロシアイを行うゲームです。それが現代の格差社会に生きる者にとってのある種の慰めとなったことが、本作品のヒットのひとつの要因です(だから、『V3』劇中のまことが平和であるが故に刺激を求めてコロシアイを鑑賞しているというのは、作品の本質とは乖離した設定です)。
 しかしそれだけではあまりにも切なすぎるから、超高校級たちの楽しげな青春を体験することを、上に挙げた「幸福な学園生活のスナップ」を更に推し進めたものを、ファンは望みました。
『スーパーダンガンロンパ2』で「あいらんどモード」が実装されたのはそれが理由だったはずです。このオマケ要素は「無残に若くして咎なく死んでいった少年少女たち」が楽しく暮らす仮想世界でした。
 となると今回の「育成計画」はその更なる延長線上にある、究極のファンアイテム()となるべきものでした。
 ところがこの「育成計画」、全キャラの登場、掛けあいがあるのは嬉しいのですが、上に書いたように使い回しの立ち絵にパートボイスのみ。卒業式くらい新録ボイスがあるのではと思っていたのですが、それは一切ありませんでした。
 ちょっとこれについては、納得がいきません。何しろ本編に登場する「偽物」は実に饒舌にしゃべっていたのですから、その時にこちらの音声を録ろうと思えば録れたはずです。
 一方、条件を満たせばアニメ『3』のキャラたちが登場する(ドットキャラとしてであり、育成キャラではありませんが)モードなどまでが用意されていたりして、随分と凝っています。作り込む余裕がなかったという感じでもありません。
 こうなると、ボイスがないこと自体が、作り手たちの強烈な悪意とすら、ぼくには思えてくるのですが。

『ニューダンガンロンパV3』

無題

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……ということで以降は広告消しの駄話です。
 しかもまた、『ダンガンロンパ』についてのグチです。
 ファンの方はご存じでしょうが今年の1月12日、ファン待望の新作『ニューダンガンロンパV3』が発表され、あちこちで悲嘆の声が巻き起こっています。
 アマゾンのレビューが荒れに荒れておりますが、目立つのは「急速に冷めた」という怒りよりは失意の声。絶望ではなく失望。
 まあ、グチと書いたようにぼくもそうしたひとりなのですが――そんなわけで、ここに簡単に感想を書き留めておこうと思った次第です。
 ネタバレなど気にせずガンガンしますので、ご了承ください。

 さて、本筋に入る前に、ちょっと気になったことなど。
 今回、発売前に一番危惧されていたのはモノクマの声ではないでしょうか。
 個人的に、TARAKOさんの演技は素晴らしいのですが、素晴らしいだけに別な個性を確立してしまい、アイデンティティそのものが大山版とは変わってしまったような感じがします。
 また、モノクマーズの父親という設定とTARAKOさんのオトコの子的なボイスはちょっとそぐわない気がしました。声優さんの問題を置くにしても、モノクマというキャラに「父親」という生々しい属性がつくこと自体、ちょっとマイナスだった気がします。

 しかし、まあ、それも些末な問題です。
 一番の問題は、チャプター5まで賛否はあれど、丁寧に作り込まれた本作が、チャプター6に至って、ちゃぶ台をひっくり返して終わってしまったこと。
 また、その設定も逃げを作っておきたかったからか、或いは作り手の間でも混乱があったからか、今一はっきりとしません(ぼく自身は作り手の間で展開についての混乱があったのではと思いますが、それについては後ほど……)。
 まず、本作の冒頭でキャラクターたちは「あまりキャラの立っていない地味な制服」で登場し、モノクマーズに「ダメだ、やり直し」と本来の(設定通りの)服装を着せられて、もう一度イントロをやり直させられます。
 そのシークエンス、またキャラクターたちのぬいぐるみが糸で吊られているなど、端々で「メタフィクション」を匂わせる描写があったため、何とはなしにオチも予想はできていました。
 また、『ダンガンロンパ』初代ではクライマックスでキャラたちが記憶喪失であったことが明かされましたが、『2』では冒頭で「あなたたちは記憶喪失です」と明かし、その上で二転三転がありました。
 となれば、本作は冒頭で「仮想世界ネタです」と明かした上での二転三転があるのでは……とプレイ前は想像していました。
 が、今回のオチはそれを超えたんだか超えてないんだかよく分からない、微妙なものとなってしまいました。
 チャプター6になって正体を現した首謀者(細かい点ですが、従来の作品では「黒幕」と呼ばれていた存在は、本作ではどういうわけか「首謀者」と呼ばれています)は「チームダンガンロンパ」のメンバーだったのです。
 そう、首謀者は「制作者自身」でした。
 この世界では『ダンガンロンパ』という人気コンテンツが長年、大ブームになっており、今回のコロシアイは実は53作目、つまり「V3」とは「53」という意味だったのです。
 首謀者はキャラクターたちに「お前たちはフィクションの中の存在だ」と明かすのですが……そこからがよく分かりません。
 実は『ダンガンロンパ』、『スーパーダンガンロンパ2』はただのゲーム、フィクションでした。しかし今回のキャラたちはコロシアイへの参加を自ら志望し、オーディションをくぐり抜けて来た存在であると語られます。その上で、記憶をリセットされ、偽の記憶を植えつけられ、キャラクターとしてコロシアイをしていた……ということらしいのです。
 つまり「フィクションはフィクションでも、本人たちの肉体だけはノンフィクション」なんですね。
 となると、この『ダンガンロンパ』という人気コンテンツは、表向きには「ただのゲームですよ」とアナウンスして、裏では応募してきた人間の記憶を消し、ガチのコロシアイをさせているのか?
 何だかよく分かりません。そこまでしている悪逆非道の組織が大っぴらに存在しているのもヘンだし、百歩譲ってその設定を受け容れるとするなら、視聴者たちはコロシアイをあくまでフィクションと思い込んで楽しんでいるわけで、「コロシアイを楽しむ視聴者たちは悪しき存在」と「チームダンガンロンパ」が批判するのは明らかにヘンです。
 また、この真実を明かされてよりは、キャラたちは自分たちをフィクションの存在であるとの前提で行動します。しかし、普通、もし自分が元の記憶を消され、偽の記憶を受けつけられた存在だと知ったら、「本来の自分はどんな人物なのか」をこそ、一番気にするのではないでしょうか。
 記憶を改変されただけの彼らを「フィクションのキャラクター」とするのはおかしいし、百歩譲って「記憶=人格」とでも解釈して彼らをフィクションとして割り切ったところで(つまり、肉体が人間のものであっても、人格そのものは完全にフィクションだという解釈をしたところで)、「では元の人物は」という疑問が残ります。
 にもかかわらず、彼らはそのことについて、全くの無関心です。

 チャプター6ではニコ動的に視聴者たちの悪罵を垂れ流し、「悪しき視聴者と、それに立ち向かうキャラクターたち」という図式で話が進みます。
 別にメタフィクションオチが悪いわけではありません。
 当初から本作のテーマは「ウソ」であるとアナウンスされており、それもまた、悪いわけではありません。
 しかし曖昧で整合性に欠けた設定と稚拙な演出のせいで、本作は結果としてヒット作を世に放った者たちの、それによって自分が縛られてしまったことへの不満と、成功者としての奢りが垂れ流されるばかりの作品となってしまいました。
 ですが、これはまだマシな方であり、企画段階では更に、悪意に満ちた設定が考えられていたのではないでしょうか。
 それを何とか、多少なりともマイルドにしたのが、完成作だったのではないでしょうか。
 例えば、本作には「超高校級のロボット」というのが登場します。
「いくら何でもロボットって何なんだ」と発売前から騒がれていたキャラなのですが、いざプレイすると、そこは割と普通に流されてしまいます。もちろん、彼がロボットであった必然性はドラマの中に充分にあるのですが、それにしても随分あっさりと流すなと。
 こういうのって(ぼくの感覚が古いのでしょうが、まあ、一般的には)キャラクターたちに「ロボットってどういうこと?」と充分にリアクションさせ、プレイヤーの心情を代弁させるべきなのですが、恐らくスタッフにしてみれば制作している間に慣れが生じ、そこを簡単に流してしまったのではないでしょうか。
 丁寧にリアクションさせるべきを、制作者にしてみれば慣れ親しんだことであるため、つい簡単に流す……というのはありがちな失敗です。
 ですが、それは同時に、本作が充分な時間をかけ、練り込まれた作品であることも意味しています。
 更に言えば、練り込むうちに、本作は設定が二転三転したのではないでしょうか。
 上に書いた冒頭に登場する地味なキャラクターたちのシーンでは、このロボットは「恐らく生身では」と想像される外見で登場します。
 企画当初は、この「ロボット」という設定自体が「ウソ」だったのではないでしょうか。
 他にも本作には「悪の組織の総統」「宇宙飛行士」「魔法使い」といった「いくら何でもウソだろ」と言いたくなる超高校級が登場します。
 宇宙飛行士は「書類を偽造して応募したら、たまたま選考委員の目にとまり、補欠合格した」との設定が語られ、魔法使いは実質的にはマジシャンであるのをそのように自称している。
 また「自分の流派は自分と師匠が何となく考えたものだ」などと言っている合気道家もいます。
 更にはカルト的「教祖」、「降霊術士」としての一面を持つキャラも登場し、これらもまた「インチキ」と親和性が高い。しかし前者はほとんど正体について語られないまま退場してしまいます。これは恐らく後半で言及されるカルトと、何か結びつく設定が考えられていたのではないでしょうか。
 また、当初、「保育士」を名乗っており、実は「暗殺者」……というキャラも登場しましたが、これはむしろ「暗殺者」こそが厨二的妄想、というオチが、いかにもつきそうです。
 つまり、(ネットでも発売前、噂されていたのですが)今回の超高校級たちの才能は「ウソ」というのが、当初の設定だったのではないでしょうか。
『ダンガンロンパ』はフィクションである。
 だから、彼ら自身も実はごく平凡な高校生たちで、厨二的な自分設定を自ら考え、体感型のロールプレイングゲームを楽しんでいた……当初の本作のオチは、そんなものであったと想像できます。
 それが長時間かけて練り込むうち、或いは当初の設定がNGとなり、完成版のような展開に改められたのではないでしょうか。
 オーディション風景のキャラたちの言動はその名残であり、まことのキャラもまた、本来は「主人公の正体」といった設定ではなかったか。そうなれば「まこと」という、(つまり苗木誠と敢えて同じ)悪意に満ちたネーミングの理由も、明らかになります。
 例のキャラの口癖が「地味に」であるのもまた、「本来の、コスプレする前の、地味キャラである主人公たち」に対する強烈な悪意であると言えそうです。
 そう、本来の『ニューダンガンロンパV3』はそんな風に、「凡人を嘲笑」して終わる物語だったのです。
 キャラクターたちが「フィクションのキャラにされる前の自分」に対して全く無頓着である理由もまた、「本来予定されていた設定をごっそりオミットして空白が生じたため」であったと考えることで、一応の辻褄があうのです。
 もっとも、本来の苗木誠も最初は「何の才能もない平凡な高校生」でした。これは「超高校級」という設定の世界でありながら、主人公はプレイヤーが感情移入しやすい人物でなければならないからでした。
 また日向創もそれを推し進めたかのような、「予備科生」の設定が与えられていました。
「全員が才能など持たない高校生」というオチはむしろ、今までの作劇から演繹すれば整合性があるはずです。
「暗殺者」だの「総統」だの「魔法使い」だのは厨二的な肩書きですが、いわゆる厨二キャラは、それそこ田中がそうであったように、「フィクショナルなキャラでも貫ければカッコいい」というテーマにつながることが多い。それと同様に本作のキャラたちも「仮にぼくたちがフィクションの存在でも感じた胸の痛みは本物だ」と主張したのですから、そのように持って行くことは可能だったはずです。
「ぼくたちは超高校級ではない、凡人だ。でも、宇宙飛行士になりたい、探偵になりたいという気持ちは本物だ」との精神論で巨悪を打ち破る展開は、ベタとは言え共感を呼びやすいものでしょう。
 そこを敢えてしなかった制作者たちの心理は、本作の「ギフテッド制度」という設定が象徴している気がします。既に「ギフテッド」の側に、つまり成功者になってしまった彼らの奢りは、「プレイヤーと同じ目線で作品世界を楽しむ」ことを許さなかった。
 それが、本作がこんな結末を迎えたことの理由だったのではないでしょうか。

プロフィール

雛子一

Author:雛子一
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管理人の「雛子一」です。
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