スペシャル駄話『名探偵荒馬宗介』第五回
目下、fanza様で
中です。
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ご購入は以下から!
さて、予告した『荒馬宗介』の二巻の最終回、そして女性編集者について語っていきましょう。
が、まず、本編に入る前に、前回のちょっと訂正を。
共に第一巻に出てくる怪盗についてです。
第一に「怪盗名鑑」で「怪盗999」について言及しました。これ、予告状を受け取った者の狂言、とご紹介しましたが、記憶違いでした。
実際に犯行は行われます。つまり「怪盗999」は実在するのですが、やってることも見た目もただのオッサン。捕まった時もただ「犯人」とだけ呼ばれ、怪盗っぽさはゼロ。正直、怪盗にカウントするのはためらわれます。
第二に、もう一人怪盗がいたのを見落としていました。
■ちなみにコイツも一回限りの出演。
普通に矢名完次が活躍していた初期編に出てきた、マジシャン怪盗「唯野天災」。ちなみに「ただのてんさい」と呼びます。同名のマッドサイエンティストが別の年度にも登場しており、山口太一センセのお気に入りのネタだったようです。
さて、というわけで第二巻についてなのですが、(詳しくは『荒馬宗介』タグを辿っていただきたいのですが)以前「最終回」と題した回でご紹介した一巻登場の女性編集者たちについてもちょっと復習してみましょう。
■容疑者になり、宗介に助けられる主役回ですが、皮肉にもこの次の登場が最後の出番に……。
「吉岡邦子」
恐らく、全『荒馬宗介』でも最多出演じゃないでしょうか(何しろ未読分がまだどれだけあるかも分からないので、想像ですが)。
第一話からフラグめいた描写がなされ、事件に巻き込まれて宗介に助けられる話もあるのですが、いきなり婚約者が登場し、早々に作品世界から消えてしまいます。
何か、山口太一センセの担当者さんがそのまま登場していたのではという感じがヒシヒシと……。
ちなみにこの一巻では以降、二人ほど別人と思しい編集者さんがモブレベルで登場した後、中年のオッサン編集者が一度登場し、そこで漫画家としての宗介の描写はなくなります。
■モブ編もそれぞれに可愛いです。
さて、ではいよいよ二巻登場の女性編集者を。
■一回限りの登場です。
「堀内記者」。第二巻では漫画家としての描写はほとんどなくなるのですが、ごく初期に登場したのがこの人。
宗介は『4年の学習』に(つまり掲載誌そのものに)執筆しており、またこの頃の子供雑誌は独特のコミュニティ感があって、よく漫画家さんによる編集者さんの似顔絵、漫画のキャラクターとしての登場があったものでした。
そんなことから一種楽屋落ちとして、実在の編集者を登場させたのでは……という感じがします。先の二人のモブ編集者は名無しですが、この人もモブレベルなのに名前がクレジットで説明されていて、当時の楽屋落ちのムードってちょうどこういう感じだったのです。
もっとも、二巻では冒頭のこれを以降、この種の描写は最終回までなくなるのですが……。
■目の描き方がもう、違います。
「新井記者」
この飛び抜けて可愛い編集者がいきなり、最終回に登場します。
ここで二巻最終回についても詳しく述べてしまいます。
もし知りたくない方はここで読むのを止めて、どうぞkindleでお買い求めください!
……さて、この最終回のサブタイトルは「そして荒馬はいなくなった」。
失踪した宗介を驚木警部が追う展開ですが、この新井記者、空っぽになった宗介の部屋に最終回の原稿が置かれているのを見て、「これでもう宗介に用はない」とばかりに早々に姿を消してしまいます。
編集部も「ヤツの漫画は今回で最終回だから、今回分の原稿さえあればもう用はない」とドライ。この現実と虚構が交錯する作品構造の中、宗介の失踪原因は新井記者にふられたせいでは、とぽろりと語られます。
う~む、ここまで露骨に描かれるところを見ると、逆に実話ではないのか……何かぼくの印象では実話っぽい気がするんですが……。
ともあれ、二巻は宗介が失恋して、話が終わったと言えなくもありません。
最終回の数話前のお話には、宗介が子供たちに「フツオ(当時の人気タレント)に似てる」「いや、似てないよ、フツオはモテるけど荒馬さんはモテない」とバカにされ嘆くシーンがあります。
(「子供たちから主役が嘲笑われる」シーンは『カゲマン』にも存在します)
丁度この頃、漫画の主人公たちは、かつてのように素直に読者たちから仰ぎ見られる存在ではなくなりつつありました。例えばですが、オバケのQ太郎だって「ドジでバカなヤツ」ではあれ、言わば読者代表的な子供たちと相対した時には、慕われる存在でした。
第一回でも『荒馬宗介』は「青年」が「少年」の憧れ足り得た最後の時代に描かれた作品と評しましたが、そんな時代が終わりつつあった……それが、先のシーンに象徴されています。
その先にあるのが、今回ご紹介した最終回。女性にはフられ、南の島に行くも、そこでも失恋したと思しきことが会話で語られ、とうとう最後には……第一巻が幸福な最終回を迎えたのに比べ、今回の最終回にはそんな、厭世観が漂っていたのです。
さて、以降、オチまで全部語ってしまいます。
宗介の渡った南の島に向かう驚木警部たちですが、またしても例の「妙な言葉を話す現地人」の登場。また怪獣とも何ともつかない空想上の動物がいきなり、さしたる説明もなく登場するという(だってこれ、ライオンとかでいいですもんね)、このナンセンスぶり!
■「ガルバンリ」って何だ?
そして宗介は処刑寸前、UFOを呼んで逃げ出していきます!
そう、『COMIC GON!』だか何だかに紹介された、有名なオチです。
もちろん、では宗介は宇宙人だったのか、といった合理的な説明は一切なしで、柱に「最終回はリドルストーリーです」と一文あるのみ。
また、顔が見えない宗介ですが、ある種のお約束として、最後にその素顔を驚木警部たちに晒すものの、それは読者には明かされまいまま……という外しっぷり。
やはり山口センセ、普通にオチのあるような漫画には興味がなかったのでしょう。
しかし一番すごいのはここ!!
■「略」。
何で会話を略すのか!
もう、最終回らしいことは何もしたくない、全てを放棄してぶん投げたいと思いながら描いていたとしか思えないこの無茶苦茶さ!
これが『荒馬宗介』の本質だったのでしょう。
中です。
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が、まず、本編に入る前に、前回のちょっと訂正を。
共に第一巻に出てくる怪盗についてです。
第一に「怪盗名鑑」で「怪盗999」について言及しました。これ、予告状を受け取った者の狂言、とご紹介しましたが、記憶違いでした。
実際に犯行は行われます。つまり「怪盗999」は実在するのですが、やってることも見た目もただのオッサン。捕まった時もただ「犯人」とだけ呼ばれ、怪盗っぽさはゼロ。正直、怪盗にカウントするのはためらわれます。
第二に、もう一人怪盗がいたのを見落としていました。
■ちなみにコイツも一回限りの出演。
普通に矢名完次が活躍していた初期編に出てきた、マジシャン怪盗「唯野天災」。ちなみに「ただのてんさい」と呼びます。同名のマッドサイエンティストが別の年度にも登場しており、山口太一センセのお気に入りのネタだったようです。
さて、というわけで第二巻についてなのですが、(詳しくは『荒馬宗介』タグを辿っていただきたいのですが)以前「最終回」と題した回でご紹介した一巻登場の女性編集者たちについてもちょっと復習してみましょう。
■容疑者になり、宗介に助けられる主役回ですが、皮肉にもこの次の登場が最後の出番に……。
「吉岡邦子」
恐らく、全『荒馬宗介』でも最多出演じゃないでしょうか(何しろ未読分がまだどれだけあるかも分からないので、想像ですが)。
第一話からフラグめいた描写がなされ、事件に巻き込まれて宗介に助けられる話もあるのですが、いきなり婚約者が登場し、早々に作品世界から消えてしまいます。
何か、山口太一センセの担当者さんがそのまま登場していたのではという感じがヒシヒシと……。
ちなみにこの一巻では以降、二人ほど別人と思しい編集者さんがモブレベルで登場した後、中年のオッサン編集者が一度登場し、そこで漫画家としての宗介の描写はなくなります。
■モブ編もそれぞれに可愛いです。
さて、ではいよいよ二巻登場の女性編集者を。
■一回限りの登場です。
「堀内記者」。第二巻では漫画家としての描写はほとんどなくなるのですが、ごく初期に登場したのがこの人。
宗介は『4年の学習』に(つまり掲載誌そのものに)執筆しており、またこの頃の子供雑誌は独特のコミュニティ感があって、よく漫画家さんによる編集者さんの似顔絵、漫画のキャラクターとしての登場があったものでした。
そんなことから一種楽屋落ちとして、実在の編集者を登場させたのでは……という感じがします。先の二人のモブ編集者は名無しですが、この人もモブレベルなのに名前がクレジットで説明されていて、当時の楽屋落ちのムードってちょうどこういう感じだったのです。
もっとも、二巻では冒頭のこれを以降、この種の描写は最終回までなくなるのですが……。
■目の描き方がもう、違います。
「新井記者」
この飛び抜けて可愛い編集者がいきなり、最終回に登場します。
ここで二巻最終回についても詳しく述べてしまいます。
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……さて、この最終回のサブタイトルは「そして荒馬はいなくなった」。
失踪した宗介を驚木警部が追う展開ですが、この新井記者、空っぽになった宗介の部屋に最終回の原稿が置かれているのを見て、「これでもう宗介に用はない」とばかりに早々に姿を消してしまいます。
編集部も「ヤツの漫画は今回で最終回だから、今回分の原稿さえあればもう用はない」とドライ。この現実と虚構が交錯する作品構造の中、宗介の失踪原因は新井記者にふられたせいでは、とぽろりと語られます。
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ともあれ、二巻は宗介が失恋して、話が終わったと言えなくもありません。
最終回の数話前のお話には、宗介が子供たちに「フツオ(当時の人気タレント)に似てる」「いや、似てないよ、フツオはモテるけど荒馬さんはモテない」とバカにされ嘆くシーンがあります。
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もう、最終回らしいことは何もしたくない、全てを放棄してぶん投げたいと思いながら描いていたとしか思えないこの無茶苦茶さ!
これが『荒馬宗介』の本質だったのでしょう。